25. 上信国境 前編
2013年5月
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上信国境、つまり群馬-長野県境のエリアは関東の自転車乗りを惹きつける地域の一つであり、筆者もこれまでの遠征で碓氷峠十石峠を越えた。これらはいわば主役の峠だが、このエリアには他にも面白い峠が密集している。今回はそんな脇役の峠をまとめて越えよう。上り下りを繰り返すしんどい遠征になりそうだ。


今回のスタートは前回に引き続き佐久平駅、しかも全く同じ新幹線に乗ってやってきた。タイムイズマネーであり、早起きは三文の得ということだ。果たして今日はどれだけ走ることになるのだろうか。
田口峠の入口を目指し、7:50に走り出した。田口峠はr93下仁田臼田線の峠であり、R254内山峠とR299十石峠の間に位置するマイナー峠だ。

前回と同じコースを走ってもつまらないので、今回はR141の旧道っぽい道を選んだ。旧道探しの際に一つの助けとなるのが踏切だ。踏切の名称は道路の格が変化してもそのままにされていることが多いように思う。写真の道にはJR小海線の踏切があり、この道路が甲州街道であることを主張していた。

前方の八ヶ岳連峰が美しい。

個人的に納得いかない中込交差点の青看。南下してきたはずなのに、直進が富岡、左折が上田小諸、右折が清里佐久穂とはどういうことか。まんまとだまされ、あり得ない方向に進んでしまった。

前回と同様にr2を南下。上中込交差点の青看の左折方向に田口峠と書いてあり、かついい感じの細い道が続いていたのでかなり惹かれたが、自信がなかったので通過。しかしやはりこの道がr93の旧道だったようだ。
結局臼田駅に向かう交差点を左折し、田口峠に向かう。臼田駅の手前に、田口峠だけのための青看があった。

その先で無事に旧道に入る。写真は龍岡城五稜郭。日本に二つしかない五稜郭のうちの一つとのことだ。

現道に合流し、きつくなった勾配を上ってゆくと写真の雨川ダムに着いた。目の覚めるような美しい色の水を湛えたダム湖である。

ダムの影響がなくなり再び緩やかな上り勾配に戻った。今後のことを考え、体力を消耗しないように自重気味に進んで行く。前方に峠の窪みが見えるようになってきた。ゴールは近い。

隧道が見えた。第一隧道というシンプルな名前の普通の隧道だ。S50竣工。この峠の車道としての開削もこの年なのだろう。

隧道を潜ると景色が一変した。険しい上州の山並みと、田口峠と書かれた立派な標柱が目に入る。9:40に田口峠に到着。標高は1120 m。佐久との標高差は約400 mだ。
この峠の面白い点は県境をまたがないことである。隧道を潜った先もしばらく長野県だ。

景色を眺めながらおにぎりを一個食べ、再び走り出した。

田口峠の東側斜面には凄まじいつづら折れ斜面が待っている。上信国境の峠は碓氷峠に近づくほど片峠的な構造になっているんだと思う。実際、例えば十石峠と比べると田口峠ははるかに片峠に近い。

いくつかの隧道を抜け、一気に下った。写真はその一つ、狭岩隧道。おそらく戦後の竣工と思われるが詳細は不明。

峠から約8 km下り、ようやく県境に到達。ここから先は群馬県。今日一回目の県境越えだ。

県境から長野側を望む。田口峠道にはこのように狭い区間があるので四輪だと大変だろう。

さらに下ってr108との分岐を左折。右折すると車道未開通の余地峠に向かう。

南牧村をかっ飛ばして走る。前回の上野村と同じようにのどかな村だ。

r45下仁田上野線との分岐に10:45に到達。道なりに進むと下仁田に向かって下って行くが、右折してr45を進み塩ノ沢峠に向かう。ここからは再び上り坂だ。
田口峠からここまで1 h以上かかってしまった。前回は今回と同じ時間に佐久平駅をスタートしたが、11:00には十石峠から下った先のr45との交点に到達していた。少し焦る。

分岐から3 kmほど上り、新旧道の分岐点に到達した。ここまで上ってくるのも結構大変だった。県境を跨がない峠なので少しなめてたんだけど、間違いだったかもしれない。
ここから先は当然旧道を進む。下からは左の激坂が旧道に見えてたんだけど違ってよかった。

集落を抜け、そこそこの勾配で上りながら延々と斜面をトラバースする。ずっと林の中なので景色の変化がなくてつらいが、ほとんど止まらずに上って行けた。旧道としてはよく整備されていて走りやすい。

延々上ると、ようやく上空が明るくなり、周囲の尾根が手の届きそうな距離に近づいた。前方に見える窪みが塩ノ沢峠だろうか。

視界を遮る木々がなくなり、延々と続く上州の山並みが見えるようになった。

12:05にようやく塩ノ沢峠に到着。峠はS32竣工の塩之澤隧道で貫かれている。r93とr45の分岐から約10 kmの上りを1 h20 minで走ってきた。峠の標高は1029 mであり、その分岐とは700 m程度の標高差がある。

[追記] 塩ノ沢峠道は実は林道の馬車軌道跡であり、塩之澤隧道自体、戦前には既に存在したようだ。この遠征で越えた峠のうち、塩ノ沢峠が最も大物だったとは、奥が深い。

塩之澤隧道を潜り、南牧村から上野村へ。隧道を抜けた地点になかなか良い感じの青看を見つけた。尾根の上をスーパー林道が通っているようだ。この旧道が今でも整備されているのは、林道へのアクセスルートであるためだろうか。

塩ノ沢峠の上野側は明るい雰囲気。一気に下ってゆく。

湯ノ沢トンネルを抜けた現道と合流し下る。R299との交差点が近づいた。

R299に突き当たってr45の峠道は終了。右折すると十石峠に向かうが、ここは左折。現時刻は12:35で、前回よりも1.5 h時間がかかっている。先を急ごう。

少しだけR299を進み、r124上野小海線旧道への分岐を右折する。前回R299の旧道に入るために左折した交差点である。S39竣工の砥根平橋を渡るとすぐに連続雨量の規制標識が現れ、ぶどう峠への上りが始まる。ふと志賀坂峠道の入口を思い出した。
写真左下に見えるヘキサのついた標識に小海まで39 kmと書かれていたのを見て、そのうち一体何km上りが続くんだろうと気が遠くなった。が、幸か不幸か右上に答えが書いてあるのを見逃していた。ここから延々17 kmの上りだ。

ぶどう峠の上野側の麓のあたりには、上の写真の区間の以外にもちょこちょこと旧道が残っている。写真はその旧道区間に存在する矢弓沢林道の入口。十石峠道の通行止迂回路である。

少しだけ上り、浜平温泉の立ち寄り湯で昼食休憩。時刻はちょうど13時だ。駐車場がいっぱいで驚いた。さすがGWである。

地図のリンクは https://ridewithgps.com/routes/41315406

ここまで田口、塩ノ沢の二峠を越え、70 km近く走ってきた。獲得標高も既に1000 m以上ある。しかし今日の本番はここからだ。
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