83. 大峠函嶺越 前編
2022年11月
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間違いなく、日本を代表する特殊な国道峠といえるR121大峠。この峠のことを知ったのはもう15年以上も前のはずだ。旧道や廃道を扱う沢山のサイトに取り上げられていたことを思い出すが、この峠を走破した記録は年々減っている。自分が完抜できる自信は全くないが、「難攻不落の空の要塞」に挑むときがやってきた。


今回は6時半に前回のゴールの会津若松駅を出発。前回は山王峠を越えるなど楽しい遠征だったが、本当の目的は今回と次回のアプローチだ。今回は、大峠を越えるという目的だけのために、この時間に会津若松に立った。スムーズに峠を越えることができれば次のターゲットにも向かう予定だが、そう簡単には行かないだろう。

大峠は廃道であることが確定している。この時間から走り出せば、もし進めなくなったときに引き返したとしても、現道を走って米沢にたどり着くことができるだろう。このような引き返せる時間の余裕は、廃道を予定に組み込むときには、特に事故を避けるために必要と思う。

R121を北上する。写真は会津縦貫道との分岐。自転車は走れないので右手のR121を行く。今朝は霧が濃い。

コンビニで補給し、喜多方の中心部を走る。この辺りはおそらく旧道を走っている。

霧という水準を超え、小雨になってしまっている。早く晴れてくれることを祈りながら進む。

現時刻は8時。旧道のr16を進み、現道と交差する。ここで現道とはお別れだ。

旧道の行先は入田付で、もちろん米沢ではない。

まっすぐな旧道に立つ、大峠が通行止めであることを示す道路情報。霧が晴れていないのが残念だ。

霧の中を延々と走り、8:45に福島県側の最終集落である根小屋に向かう分岐に到達。

距離を示す標識が吊られていたはずの白い鉄柱。

通行止であることを示すゲートに到達。現時刻は8:50。ここからが今日の本番だ。気合いを入れていこう。

この辺りの標高は530 m程度。峠までは600 m以上標高を上げる必要がある。

喜多方側の峠道は穏やかな雰囲気で始まった。この峠道は、会津三方道路としてM19に開削された馬車道をベースにしている。緩勾配のつづら折れで上ってゆくので、自転車にとって走りやすいが自動車にとっては走りにくい道だろう。

つづら折れを見下ろす。全ては見えていないが、ここには7段のつづら折れがある。

霧が晴れ、前方の視界が開けた。雲に隠れて見えないが、峠はまだまだ先だ。

舗装されており走行に全く問題はないのだが、この辺りから徐々に路面に落ち葉が目立つようになった。林道としても使用頻度が低い領域に入ったのか、それとも標高が高くなったため落葉が進んでいるのか。

小さい切通を抜けた。路面は落ち葉で埋めつくされている。こうなると落ち葉や枝が絡まってきて走りにくい。

現時刻は9:45で、根小屋のゲートから1時間弱かかった。

切通の先で少しだけ下って川を渡り、再び上ってゆく。

視界が開けてきた。大きく曲がったガードロープが、この峠道の冬季の厳しさを示す。

峠道最後のつづら折れの斜面を上る。普通の峠道だと、つづら折れは片側について最大1組のことが多いような気がするが、大峠は喜多方側だけで何組もあるのが異常だ。

峠道は徹底して緩勾配であり走りやすいのだが、ずっと同じような道のりなので飽きてくるのも事実だ。大峠の喜多方側の峠道の平均勾配は約5%。

つづら折れを上り切った。ここから先はほとんど平坦だが、奥には山並みが見える。なるほど、あの山並みを隧道で抜くのであれば、この高さから最後の最後に隧道を造ったのは自然な線形と思う。

10:30に、ネットでよく見る有名な青看に到達。峠に到達したといってもよいだろう。大峠の標高は1156 m。根小屋のゲートから約600 mの標高差、約12 kmの峠道を2時間40分で上ってきた。

大峠の峠道の喜多方側は通行止となっているが、車両を問題なく通せるように維持されているようだ。これなら、この先でどうしても進めないシチュエーションが現れたとしても、この道を下っていけば良い。

青看を潜り、右に曲がると大峠隧道だ。M17竣工だが、S9に現在の大きさに拡幅され、さらにS40頃に大規模に改修されたようだ。

扁額は右書きで大峠隧道。よく見ると、コンクリの下に坑口を囲むように階段状の模様が透けて見える。S9竣工の坑口が、S40頃の改修でコンクリに埋められたのだろう。

坑口を塞ぐように立つ板が問題だ。高さは2 mくらいあり、乗り越えるのは簡単じゃない。実は両サイドに30 cmくらいの隙間がある。水を抜くためだけであれば10 cmで十分に思われるので、人が通れるようにしているのだろうか。

その隙間に、自転車を通す。左からトライした。かなり厳しかったが、縦にしてさらにハンドルを緩めて車輪と平行にすることで通すことができた。自分の自転車は20インチの折り畳みなので何とか通せたが、これ、バイクは論外だし、普通の自転車も厳しいと思う。最近の峠道の突破の記録がネットで見当たらないのはこれが原因か。

前方には、お約束の水たまりが見えている。

写真は山形側の坑口付近から振り返る。山形側の坑口付近は水没している。また、足を濡らさないように気休めのルートとして、端にガードレールが設置されている。もちろんこの状況は把握していたのでここで足を濡らさないように対策を考えてきたのだが、中途半端な動きをしたせいで結局完全に水没してしまった。賽の神峠を思い出したが、水没という意味ではここから先が大変だった。

隧道の先は山形県。状況によっては戻ってくることになるだろう。さっきの隙間に自転車をこちらから通せる自信はないが、何とかなるだろう。

大峠隧道の米沢側坑口。かなり崩壊しているが、通り抜けに問題はない。坑口左手のコンクリ板はS40の改修だろうか。写真では見えにくいが、坑口の右上付近に四角い石がいくつも並んで見えることに気づいた。残念ながら煉瓦なのか石なのか現地では確かめ損ねたが、S9の拡幅時の坑口はコンクリート製だったはずなので、M17の開削時の坑口の遺構なのだろうか。

大峠隧道を抜け、先に続く道を見渡す。明らかに、一人分の幅が刈り払われている。送電線の管理のためか、それとも同業者の仕業かはわからないが、これなら進まなきゃならないだろう。はるか前方には米沢の市街地がはっきりと見える。

地図のリンクは https://ridewithgps.com/routes/41363861

ここまで、約41 kmの道のりを、4時間20分かけて走ってきた。ここから先が問題だが、まだ午前中なのでどのような展開になったとしても大丈夫だろう。やはり厳しい峠道は午前中に挑むのに限るな。
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